【目に見えない院内感染のリスクと身近でできる予防策】
院内感染予防の重要性は高まってきています。
患者さんと近い距離で接する歯科医院では、
特に日頃から対策に気をつけているとは思いますが、より深い知識を身につけていきたいところです。
「歯科医院で気をつけたい冬の感染予防対策」では、日頃から実践したい感染予防対策として以下の3つをご紹介しました。
1.患者さんに手洗い・うがいをしてもらう
2.アルコール消毒剤・空気清浄機を設置する
3.手袋・マスクなどで防護する
今日は、歯科医院で特に気をつけたい『飛沫感染』について、より詳しくお伝えします。
目に見えない「飛沫感染」に注意
院内で起こりうる感染には、主に3種類の経路があります。
・空気感染
・飛沫感染
・接触感染
これらのうち、患者さんとの距離が近い歯科衛生士さんは、特に飛沫感染の予防を心がけることが大切です。
飛沫感染は、患者さんの咳・くしゃみや会話により飛び散った細菌やウイルスを吸い込むことで起こります。
インフルエンザや風邪などの身近な感染症の多くは飛沫感染によるもので、
空気中に病原体が放たれると、1〜2mにわたって影響を及ぼす可能性があります。
また、歯科治療の際には患者さんの口を中心に半径5メートルの半球状に
飛沫が拡散するともいわれていますのでさらなる注意が必要です。
目に見えないからこそ、感染のリスクを知って、日常の業務の中で予防策を習慣化しましょう。
飛沫感染の予防策
感染症は、以下の3要因が揃うことで感染します。
・病原体(感染源)
・感染経路
・感染性宿主
感染対策は、この3つの要因のうちのいずれかを取り除くことが重要とされ、
なかでも「感染経路」を遮断することが最も効果的であるといわれています。
参考:厚生労働省 感染対策の基礎知識
患者さんの感染症の有無にかかわらず、感染経路を断つために、常にマスク・ゴーグル・手袋・ガウンなどの
個人防護具(Personal protective equipment: PPE)の使用を徹底しましょう。
また、上記の標準予防策に加えて、感染経路別の対策を加えることも重要です。
飛沫感染の予防でよく使われるプリーツタイプのサージカルマスクは、
実は正しい着け方の「向き」があります。間違った着け方だと効果が落ちてしまうので気をつけたいポイントです。
マスクは正しい方法で着用を
1.表裏とプリーツの向きについて
マスクの上下をつまんで引っ張ったときに、くぼむ側が内側になります。
また、プリーツ(ひだ部分)は通常下側を向くようになっています。
顔に密着させる針金が入っている製品も多いので迷うことは少ないと思いますが、気をつけるべきポイントです。
プリーツが下向きになっている理由は、菌・ほこりなどをキャッチしないようにするためです。
■マスク装着時のチェックポイント
・プリーツは下向きになっているか
・ノーズピースを鼻の形に合わせて密着させているか
・鼻までしっかり覆っているか
・着用していたマスクは顎や腕にかけない(飛散物が付着していた場合、マスク内側についてしまう)
2.取り外す際も要注意
マスクの表面には菌・ほこりが付着していきます。
取り外す際はゴムの部分を持ち、マスク表面に触れないようにすることがポイントです。
また、可能であればビニール袋などを利用して
密閉して捨てることで二次感染を予防することができます。
診察前後の手洗い・うがいも忘れずに
感染経路を断つことと同時に、
ウイルスや細菌などを体内に取り込まないような対策も忘れてはなりません。
殺菌成分配合の薬用ハンドソープでこまめに手を洗ったり、
含嗽剤(がんそうざい)で口をすすいだりすることも感染予防に効果的です。
まとめ
歯科衛生士さんの身近なリスクである「飛沫感染」を予防するには、
標準予防策に加えて、感染経路固有の対策も意識して行うことが大切です。
普段からサージカルマスクを着用している場合でも、
患者さんごとに取り替えたり、マスク着脱前の手洗い・うがいを念入りにしたり、
個人で対策できることもたくさんあります。
患者さんと近くで接することは歯科衛生士さんの大切な役割なので、
日頃からこまめなケアを心がけたいですね。
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【執筆・監修者】
森山 貴
森山デンタルオフィス新松戸 おとなこども歯科・矯正歯科 院長
東北大学歯学部 卒業
日本顎咬合学会 認定医
国際口腔インプラント学会 認定医