【フッ素がう蝕予防に効果的な理由とは?】
「なぜ、フッ素がう蝕予防に効果的なのか?」という点について、
これまでは深く触れていませんでした。
今回は「フッ素がう蝕予防に効果的な理由」についてご紹介します。
フッ素は歯の再石灰化を促進させる
フッ素がう蝕予防に効果的な理由は、歯の再石灰化を促進させることだとわかっています。
この事実がわかったのは、1980年代のことでした。それ以前は高濃度のフッ素塗布を行い、
フルオロアパタイト(エナメル質の成分であるハイドロキシアパタイトにフッ素が結合したもの)
を作ることがう蝕予防に効果的なのだと考えられていました。
1980年代に入り、米国の研究者がフッ素のう蝕予防効果は再石灰化の促進であることを発表し、
その結果、1000 ppm程度の歯磨剤でもう蝕予防に効果があることの根拠につながりました。
そもそも再石灰化とは?
食事などをして口腔内のpHが5.5~5.7程度の酸性に傾くとエナメル質の脱灰が起こります。
通常は約30分後にはだ液で酸が洗い流され、口腔内は中性に戻り脱灰が止まります。
その後、だ液中に含まれる脱灰によって溶け出していた
カルシウムやリンが脱灰した部分に戻ることで石灰化し始める「再石灰化」が起こります。
脱灰は短時間で進行する一方、再石灰化は時間がよりかかることも特徴です。完成したパズルをばらす作業と、
一からパズルを組み立てる作業の違いと考えるとわかりやすいかもしれません。
フッ素は低濃度で再石灰化を促進するが、補給し続けることが大切
口腔内にフッ素が存在することで再石灰化スピードは非常に速くなります。
ある実験によると、0.05 ppmFという非常に低濃度でも再石灰化を促進することが明らかになっています。
フッ化物配合歯磨剤を使用後にうがいをしても効果があるのは、
このように低濃度のフッ素で再石灰化が促進されるという背景があります。
参考文献:Moreno et al:Journal of Dental Research 65:23・29,1986
さらに、エナメル質がフッ素と結合したフルオロアパタイトは口腔内が酸性に傾くと脱灰しますが、
同時にフッ素を放出することで再石灰化を促進します。
つまり、フルオロアパタイトはフッ素の倉庫ともいえる役割を果たしているのです。
しかし、前述のように再石灰化は時間がかかるため、口腔内では次のようなフッ素バランスになります。
フルオロアパタイトから脱灰により放出されるフッ素量 > 再石灰化するフッ素量
つまりどういうことかというと、口腔内は常に放出されるフッ素の量が多いためフッ素不足となってしまいます。
そのため、日常的にフッ素を歯磨剤などで補給することがポイントです。
まとめ
フッ素のう蝕予防効果は「再石灰化の促進」によるものです。
フッ素は低濃度でも再石灰化の促進効果がありますが、
再石灰化は脱灰よりも時間がかかるため、継続的にフッ素をお口の中に取り入れることが大切です。
【関連リンク】
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【執筆・監修者】
森山 貴
森山デンタルオフィス新松戸 おとなこども歯科・矯正歯科 院長
東北大学歯学部 卒業
日本顎咬合学会 認定医
国際口腔インプラント学会 認定医